徳谷柿次郎のクラフトインターネット日記

クラフトインターネットに想像以上の反響

思いつきの概念が、時代にハマることがたまにある。この個人サイトの在り方に「クラフトインターネット」と名前をつけて、ヒラクくんと雑談した内容を散りばめて投稿してみた。

プラットフォームへの違和感を唱えながら、X(Twitter)、Facebook、instagram、Thredsのすべてに。これはもう10年以上続けている「無人島で旗を振り続けるために、使えるものはぜんぶ使う。これがおれの生き様であり、泥臭い広報でもある!」の精神が生んだクセみたいなもんである。

コメント付きの引用リポスト、ストーリーズのリアクション、Facebookのコメント欄はBBSのように伸び始めた。なぜかX(Twitter)のフォロワーが100ぐらい増えたのは興味深い。

広がり続けることへの抵抗の意思表明が、またプラットフォーム内のアテンションを獲得し、地味に広がってしまう矛盾がおもしろい。脳になにかしらの成功報酬が生まれて、「気持ちいい〜〜」と、各SNSをチェックする頻度が荒廃インターネット人間になってしまった。

直接リアクションをくれた人のほとんどが「最近、同じようなことを考えていて…」である。つまりシンクロニシティ的な共感。同時代性でもやもやしていた感情が、薄い霧のように漂っていたのだろう。そこにピタッとハマるような名前が降りてくる。待ってました、と言わんばかりに。

ただ、自分の中では20年以上前からやってきたことの再現でしかない。

そもそも年末年始の長い休みの中で脳がクリアになって、思考のスペースが生まれるもの。すると、なにか衝動的に手を動かしたくなる。この流れも昔から持っている感覚で、年末年始に新しいホームページやブログを何度も立ち上げてきた。過去の自分との大きな違いは同じ行為であっても、時代性を掴んだコンセプトありきなこと。漠然と始めたものではなく、明確な意思があって立ち上げた強い理由がある。

つぎに、編集者として「URLをクリックしたときにコンセプトが伝わる見た目である」「読み進めたくなるタイトルと本文が並んでいる」「最低でも記事は5本必要だろう」と最低限のハードルを設定。能登半島地震の不安から距離を置くべく、無心で手を動かし続けた。

小さな衝動を小さく形にすることがプロトタイピングの真髄だと思うが、ワードプレスの立ち上げは独自ドメイン取得とセットでものの30分で登録完了したので、だれでも簡単に始められると思う。

「あれ、昔はこんなにシンプルじゃなかったのにな。いつの間にか進化してるー!」

独自ドメイン取得に12ドル。年間契約費用が96ドル。消費税を足して合計105ドル(約14,000円)が、この自由な空間を作り上げるコストだ。めちゃめちゃ安いと思うが、テキストオンリーの場所としてはややハードスペックな気もしなくない。

時代に逆行した価値観でデザインテンプレートを選んで、とにかくシンプルにしたかった。フォントのサイズ感や見出し、背景などの色味は細かくカスタマイズできる。プラグインを活用した細かい機能の追加は、ある程度の知識があればいくらでもできるだろうし、わからないなりに触って学ぶことのDIY精神があれば対応できそうだ。

まず1本目の文章は「誰も言っていないクラフトインターネットを考える」のタイトルだけ浮かんだので、ことの経緯をざっとまとめた。次にヒラクくんと新宿ベルクで生まれた極上の雑談体験について日記的なものも書いた。残りは自著『おまえの俺をおしえてくれ』の本文を過去noteに転載していたので、note側は非表示にしてワードプレスに3本分コピペした塩梅だ。

そういえば、ヒラクくんと話ながら「クラフトインターネット」で検索をかけたら何も出てこなかったのが驚きだった。まじか。ありそうなのに。ちゃんとプライベートモードで検索をするぐらいにリテラシーはある。それでも皆無だった。「クラフトインターネットの席が真空状態!? そもそもそんな席必要なのか!?」と自分の口からぽろっと出てきた言葉を訝しんだ。

なぜなら安易に「クラフト」の冠をつけると、抵抗を示す人が一定数示す人がいるのも理解していたからである。なんでもかんでもクラフトって言うんじゃねーよ勢。気持ちはわからなくない。既存の概念を否定するニュアンスが強く出てしまっては元も子もない。

慎重に進めなければいけないな……と謎のバランス感覚を発揮。投稿文では「クラフト感」を少し補助するような言葉を並べた。リンクは「kakijiro.net」にして、サイト全体感の中に「クラフトインターネット」の文字が少し浮き出るぐらいがいいかもなぁとコントロールしたのは前述の恐れがあるからだ。

前置きと補助線がなければ自己主張も伴わないような閉塞感から生まれたのがこの概念なのにも関わらず、インターネットの大海原に放り込まなければリアクションは生まれない。投じた波紋の動きによって、もしくは蜘蛛の巣のネットのように、社会の反応をつぶさに観察することが仕事であり趣味みたいなものなので、思いついたものは適切なフォームでぶん投げたいのよ!!矛盾大好き!!

というわけで想像以上の反響があって、私のインターネット魂は震えている。当初からクラフトインターネットの概念についてただ対話するような薄い本を作ろうと思っていたので、やらない理由が一歩目で消滅してしまった。やらないよりも、やったほうがいい。

インタビュー、もしくはコラムとしてきっかけを生んでくれた小倉ヒラクくん、インターネットの祖父・家入一真さん、小商い&ヒッピーカルチャーに詳しい元ALL YOURS・木村まさしくん、DIYインターネット会社すぐ作るおじさん・カズワタベくんの参加が決定。どうしても語りたい人がいたら連絡をください。

インターネットの思想哲学を言語化し、世の中にクラフトプレスで放り込む。呼び名を変えればテキストサイトであり、同人誌でもある。モノの見方を変えて、新しい名前をつける。自己満足の延長にある「特定少数」と「経済合理性からの脱却」が生んだ表現を作り続けることが、「人間は遊び続ける存在である(ホモ・ルーデンス)」の体現となりえるだろう。

自著『おまえの俺をおしえてくれ』発売中

“クラフトインターネットに想像以上の反響”. への1件のコメント

  1. 美大生 のアバター
    美大生

    これからも楽しみにしてます!阿部寛さんの超軽Web、大好きなんです💕

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