新年一発目の出張は、冬の道東。信濃町→長野→羽田→釧路→浦幌のルートで、普通に考えたらクソ遠いんだけど、6年くらい通っている土地なので精神的距離は近い。自分の中で一番通って関係性が増殖している土地だと思う。
とはいえ、信濃町を早朝に出て向かうには羽田空港11時発は早すぎる。頑張ればいけるギリギリのライン。どうせ夜は長くなるのが見えてるし、登壇でキレキレのトークをかまさないといけないため、東京前ノリで準備万端の脳みそで挑むことにした。
年末年始は山奥にこもっていたこともあり、街の機能と息吹を吸い込みたくなる。この衝動の反動みたいなものは、二拠点生活、自然暮らしを経て辿り着いた感覚のひとつだ。
「都市の文化と情報に触れたいー!」
ないものねだり。隣の芝生はブルー。東京に若者が吸い取られていく気持ちがよくわかる。自分の判断とお金で全国どこにでも行けるからこそ、自然のおもしろさを適度に味わえているだけ。多感な10代に閉塞感を与えてしまうのは、外の可能性を肯定し、連れ出せる環境があるかどうかなんだろうなぁ…としみじみ考えてしまう。
前ノリを推し進めたのは伸びた髪の毛の煩わしさもある。新年のリセットしたい欲求、道東の登壇、40代の髪型に正解なし……気づけば原宿にある美容室「らふる其のニ」を予約していた。
オーナーは山梨出身の中村拓郎くん。落ち着いた雰囲気と東京だけじゃなくローカルにまで伸ばしたアンテナ、なによりナイスガイ。お店も落ち着いたサロン的な空間で、共通の知人が多いこともあって会話が弾むいい美容室なんだよな〜。
と言いつつ2年ぶり2度目の来訪。東京で3店舗ぐらい信頼している美容室があるんだけど、その日の予定で旅先カットは変わってしまうし、前日に「限界だ!髪を切ろう!」となるタイプなせいで同じ美容室に通い続けられない呪いにかかっている。各所に申し訳なさもありつつ、あちこち顔を出すのが好きな自分もいる。
ちなみに旅程に余裕があれば札幌や京都、福岡といった都心部でも旅先で髪を切ることがある。その土地の友だちが通っているお店を聞いて、担当が空いていたら予約。付き合いが長いこともあって共通の友だちトークはポップコーンくらい弾けるし、関係性を大事にして生きているから彼ら彼女たちに惹かれるんだなとも思える。
北海道上川町の蝦夷丸がわざわざ札幌で髪を切っていて、その美容室を紹介してもらって行ったときに、「この体験は旅の体験を面白くできるし、違う土地でも試していこう!」と確信した。
知らない土地で新しい自分になる。見慣れた自分の顔も、誰かの視点が宿る。長野に戻っても、その小さな変化はお土産的に機能するし、髪が伸びたらいい感じに忘却していく。こんなことをしてるから長野で行きつけの美容室ができないし、放浪の客の扱いは難しいんじゃないかと思うんだけど、実際どう思うんだろ?
病院も通えないし、接骨院も通いきれないし、ジムは2年間会費を払ったまま通えない自分を認めたくなくて無視している。早く解約したい。
違う土地に通い続ける行為は、目の前の暮らしを削り取る作業でもあるのだ。この削り節がメシのタネ。またいいダシが出るのよ。時間は有限、身体はひとつ。頭脳はアルコールと刺激にまみれて、好奇心はずっとトイザらスキッズでいたい。
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